カムバック!片倉雄一−その1−

<ダブルショック遺セット>

  遺品整理にいったときのことです。書物 レクチャーノートなど書棚を整理しつつ 道具も多少あって デック類が たくさんあったので ひとつづつ確認しました。
 かなり使用してあるレギュラーデック ギャフカードのデック フォーシングデックなど・・・ 中には まだ封も切られてない新品のデックもあったりします。

 そんな中 あきらかに封をきったばかりのバイスクルがありました。
何げに 箱を開け 中身をだして広げてみると 購入したてのままのようで 各スートが順番通りに並んでいました・・・ と あれ? AとKが 抜けている。 と気づいたのでした。

 全部ひろげると 封を切って A4枚とK4枚を抜き出して デックのトップに置いてあります。
 デックトップから ダイヤK クラブK ハートK ダイヤA クラブA ハートA スペードA スペードK です。


 マジックマニアの方なら すぐわかるでしょう。
片倉雄一さんの代名詞ともいうべき 彼考案の「ダブルショック」のセットです。
 正確には 演技するには 8枚のカードが そのまま裏向きトップでは 出来ないのですが そこにセットしてあれば いつでも「ダブルショック」のセットにできるはず。
 おそらく 片倉さん本人が 封をきって セットしてそのままなのだと思われます。
まさに 遺稿ならぬ 遺セット・・・
 それみたとき ちょっとじわっと来てしまい そのまま デックは 所有してます。
写真で 紹介しておきます。  これが 片倉雄一さんの 遺セットです。 
ダブルショック遺セット
















<お気に入りの猫の声>

猫声おもちゃ
遺品のなかに 写真のような物が たくさんみつかりました。 当初は ゲコスティックのように振って音をだす使用法だと思ったのですが 片倉さんのノートを見ていたらこれを使用するマジックがちゃんとありました。
 どうも マイク・スキナーのレクチャーで見たようです。

<「猫」 これはマイクのレクチャーの中で 一番気に入ったもの。あきらかにボク好み。>
 とノートにも書かれてます。
このオモチャを箱にいれて 箱には「予言の箱」と書いておきます。
 先に 予言を書くといって 箱の裏に マジシャンは 何か書きます。
 マジシャンは 乗り物や 動物の書かれたカードを持ち出して 客に引かせます。
 そのカードを見ると 猫の絵が描かれてます。 客が予言の箱をひっくり返すと 何も書かれてませんが ひっくり返すと同時に 「にゃーー」と 鳴声がします。

 たしかに おもちゃを ひっくりかえすと 「にゃーー」と猫の鳴き声がします。
追悼オフでも かなりの数があって もって帰ったマニアもいると思いますので 是非片倉ノートにあるように 「予言の箱」として 作成してくださいませ。
 問題は絵柄のカードを どこで入手するかでしょう。

 片倉さんも このマジックは気に入ったと書いてあり 製品化しようと 多量に買ったもののそのままになってしまったのでしょう。
 是非 もって帰った方は 遺志をうけついで 演技で 使ってください。
ボクももっているので 使おうと思ってます。

猫のノート




















<邪宗門マッチ ワンハンドルーチン>

邪宗門マッチ
若き日の片倉さんは 三越の当時のディーラーの中村さんという方と仲よかったらしく ノートのメモに 「中村さんが みせてくれた」というマジックが かなり見受けられます。
 そんな中のひとつです。

ノートには 「邪宗門のマッチ」と書かれているので あの喫茶店「邪宗門」のマッチだと思うのですが 遺品の中にあったのは写真のように新橋の「喫茶マジック」とかかれてます。
 マークが 異なるだけで ものは同じのようです。 写真をみると マニアは ほぼハンドリングや手順が 思い浮かぶのではと思います。
 ノートでは A面がダイヤ B面がクラブ ですが 遺品のマッチは A面がクラブ B面がハートになってます。

 ルーチンとしては 「マッチの表が3 裏が6です。」 とみせて 「表はなんでしたっけ?」と聞くと「3」 というので ひっくりかえしてみせると 「1」になって「1の裏は 4なんですね」と 再度ひっくりかえすと「4」になっているというもののようです。

 それを 両手つかわずに 片手で 三越の中村さんがやってみせたのを 綺麗にメモってあります。
 実際やってみると 片手のほうが かっこいいですね。 片倉さんも そこが気に入ってメモったのではと 思います。
 たしかし 片倉さんのマジック なにをやっても かっこよかったです。
ノートにある手順は 3→6→3 と 一回 3であることを 確認させてから →4→1と 変化させます。
 スタートのときの手の位置をノートのようにすると そうなります。
 そのほうが おもしろいと ノートに書かれてますが その部分は 片倉さんのアイデアなのかなと 思ったりしてます。
邪宗門のノート
























<手書きのレクチャーノート>

レクチャーノート
写真のレクチャーノートは 遺品ではないです。 自分が プロマジシャン FK氏より頂いたものです。
 ボクが 片倉ファンだと言ったら FK氏が 若かりしころ トリックスで購入したこのレクチャーノートを 確か バイスクルのデックケースと交換したような記憶があります。

 レクチャーノートは たしかに 後ろをみると「トリックス」のマークがあるので 製品のようなのですが 見てのとおり 端をホッチキスでとめた製品。
 中身をみると 活字ではなく 手書きの文章です。文字だけでなく絵も手書き。
 作りは 簡略でも 中身は 片倉さんの作品集・・・ 内容は 濃いです。
しかも 手書きでも 文字も絵もとてもみやすい。

 そして いまあらためて見てみると 遺品で 引き継いだ直筆ノートと 筆跡も同じ しかも絵のタッチも同じ。
 レクチャーノートを見ると 「あとがき」の部分が 色が濃いので 後から書き足したことがわかります。  おそらく 片倉ノートをそのままコピーして「あとがき」を足して製品にしたと思われます。
 つまり 片倉さんのノートは そのまま コピーしても 製品になりうるくらいの完成度の高いノートであったのです。


 ちなみに レクチャーノートの内容は
1.DOUBLE SHOCK
2.'RUB'
3.GOLD FINGER
4.ODD CARD MYSTERY
5.スローモーション ジョーカー トゥー エーセス
6.スプーン トリック
 濃そうな内容でしょう。


<意外なもの〜サムロック〜>

親指錠
遺品を みまわすと 意外な感じのものが あったりします。
これもそのひとつです。
 写真を見た方 これは何だか わかった方は そうはいないと思います。
基本的には マジック専用道具ではないのですが マジックにも使用できる といった 代物です。
 一見 手錠のようにも見えますが 大きさは 長手方向でせいぜい10センチ程度です。

これは サムロック(親指錠)というもので 手錠の代わりになるらしいです。
 人間は 親指の自由を奪われると 手錠されたのと同じ効果があるようです。

 親指の自由を奪う・・・  そう これは サムタイの演技が できるのです。
結ぶわけではないので サムタイではないです。
 やはり サムロックというべきか・・・
 はっきりと やり方知らないのですが 以前 テンヨーのあるディーラーさんに実演してもらったの覚えてます。
 そのときは サムロック自体 どこで 購入したのか教えてもらえませんでしたが まさか片倉さんの遺品に はいっているとは 意外でした。

 ちょっと 片倉さんのマジックからは イメージしにくい道具だと 思いますが いろいろ広い興味をもっていたのでしょう。


<カリヨン>

カリヨン
ボクはあまり知らなかったのですが 遺品整理していたら「カリヨン」という冊子がたくさん見つかりました。
 いまから35年ほどまえ 若いマジシャンたちが カリヨンという喫茶店に定期的にあつまっていたことは なんとなく記憶にあったのですが その冊子があることは 知りませんでした。
 ほんの数ページの月刊機関紙。カリヨンについては 他の方が詳しく書かれてます。

 遺品として 欠番もあるのですが 「カリヨン」は1号から61号まで ありました。
この時代の機関紙なので すべて手書きなのも いい感じです。

 片倉さんは 「カリヨン」創刊当時は18歳。 高校生のころで 実は 直筆ノートにも ”カリヨンでみせてもらった”というメモもあり 高校時代から カリヨンメンバーと懇意にしてたことが わかります。
 「カリヨン 12号」(片倉さん 当時19歳)には ”片倉くん コインアセンブリーいいねえ。” という編集後記がみられます。
 自分のマジックも かなりメンバーにみせていたのでしょう。
 なぜか カリヨンメンバーの名前には 片倉さんは 入ってないので メンバー外のスタンスでの参加だったのかもしれません。

 その後 片倉さんは トリックスのディーラーさんになり「カリヨン 55号」(片倉さん 当時23歳)には ”平田治民・片倉雄一ジョイントレクチャーのご案内”の記事があり 片倉さんは ”また 片倉雄一氏は’指先のアーチスト’として そのクロースアップスライハンドには定評があります。氏の信じられない指先の魔術を十分にお楽しみください。’と 紹介されてます。

 高校生時代の片倉さんのノート カリヨンの記事。
マジック好きな少年であった片倉さんが ディーラーとなり プロマジシャンとしての名をなしていった歴史を多少なりとも 垣間見ることができる遺品でした。


<トリックス製コインボックスがあった!>

トリックス製オキトボックス
自分は コインボックスのマジックが好きで 結構やったりします。コインボックスのテクニックの中で クリーンアップムーブというのがあります。
 中にコイン1枚いれて ボックスを逆さまの手のひらにおいて ピョンと跳ね上げて ひっくり返すと 蓋が自動的に開き 中のコインが消える・・・ というものです。
 20年ほど前に 故・村上正洋先生から 習いました。
 先生が 仰るには そのムーブは いろんなボックス試したけど トリックス製のが 一番やりやすい。とのこと・・・
 当時は トリックス製のボックスしか持ってなかったので その意味がわからなかったのですが 後年 いろんなボックスで やってみると 確かに トリックス製のが 際立ってやりやすいのです。
 ジョンソン製のは かろうじて可能。中には ムーブがほとんど不可能なボックスもあります。
 蓋の深さ 重心の位置など微妙な違いだと思われます。

 コインボックスのマジックを よくやるようになり トリックス製ボックスもかなり傷んできたので もうひとつ欲しいと思ったのですが すでにトリックスでは 製造中止。

 1500円ほどの道具だったので 買っておけばよかったと 思ってたところでした。
片倉さんの遺品の中に トリックス製のコインボックスを 見つけたときは 「わっ!! あった!」と声をあげてしまいました。
 片倉さんは コインボックスのマジックは あまりやらなかったらしく 見ての通り 綺麗です。(写真手前が 片倉さんのボックス 奥の写真が ボクの使用中のもの)


 きっと 17年のあいだ ほぼ未使用のまま 片倉さんが ボクの為にとっておいてくれたのではと 思うことにします。
 片倉さんからの プレゼントだと思って 使わさせて頂きます。


<謎のツィスティングエーセス>

 「ツイスティングエーセス」 いわずと知れた ダイ・バーノンの名作パケットトリックです。
 片倉さんのノートにも 三越のディーラーさんから 習った ダイ・バーノンのツィスティングエーセスと綺麗にメモされたぺージが あります。

 写真は片倉さんの描かれた挿絵のほうを示しています。
 最初は ツイスティングエーセス自体 よく知っていると思っていたので このページはあまりよくみてなかったのですが 挿絵を何気にみていると 「あれ?」と 思って読み直してみました。
 よく見てみると自分の覚えている手順とハンドリングが異なるのです。


 まず 最初のトリプルリフトの部分が省略され いきなりセットから はいっていますがここはまぁさほど違和感はないのです。
 次にエルムズレイカウントで 1枚づつAを表向きにします。2枚目のAまでは 同じですがその後がことなるのです。
 以下( )内が ボクの覚えているハンドリングです。

A: 表になったAをパケットトップにもってくる。表向き 裏向き 裏向き 表向きの順番になる。全体をひっくり返す。
 (エルムズレイカウントの最後の1枚はパケットボトムにもっていく。 表向き 裏向き 表向き 裏向きの順番になる。 トリプルリフトで一番上のAを 裏向きにする。)

B: 裏向きでエルムズレイカウントをすると 3枚目のAが表向きになる。(リバースカウントをすると3枚目のAが表になる。)
C:表向きになったAを アウトジョグさせてパケットボトムにもっていく。これで パケットトップから 裏向き 裏向き 表向き 裏向きになる。(表向きのAをパケットトップにもっていき 裏向きのカードをダブルで取り上げ 下の残り2枚を 表向きにする。全体をひっくりかえす。 )


 と 異なっている点があるのです。
 片倉さんのノートは 1973年のもの。これは ノートのほうが 本来の原案であって ボクが 覚えているのは 高木重朗さんあたりの改案ではないか・・・ とふと 思ったのです。

 そこで 調査するべく 二川さんのところへ 出向き バーノンの著書が合本になっている資料を ふたりで 見たのです。

 すると やはり ボクの覚えているハンドリングがバーノンのオリジナルでした・・・
 じゃ この片倉さんのノートの手順は・・・?
ノートにも「バーノンのツィスティングエーセス」と書かれています。

 ひょっとして 教えた 三越のディーラーさんの改案なのか ディーラーさんが 覚え違いしたのか・・・
 几帳面な片倉さんのことなので 習ってすぐノートにするでしょうから 片倉さんの間違いは可能性低いと思われます。

 二川さんの話では 当時の三越のディーラーさんだと 故人のはずとのこと。ということは・・・ もう 確認する術はないようです。

 まさに 謎の「ツィスティングエーセス」の手順でした。

 実際に演じてみると 理屈として合わないところがある手順なのですが テンポよくやると綺麗に見える手順ではあります。

 ご興味あれば 是非 演じてみてください

謎のツイスティングエーセス
























<天才の片鱗〜YK'sターンオーバーチェンジ〜>

YK'sTurnOverChange
片倉さんのノートは 主には 他の人から 見たもの聞いたもののマジックメモであることが多いのですがなかには 題名のような 彼のアイデアのものも あったりします。
 わざわざ「YK's〜」と 書いてあるので 彼が考えたものであることは 間違いないでしょう。

 このカードチェンジは ノートをパラパラと見たときから気になってたものでした。
絵の部分だけ 掲載しますが そこだけみれば 十分かと思います。

 それは テーブルに置いたカードを デックを持った手で ひっくり返すモーションで別のカードとチェンジするテクニックです。
 何か思い出しませんか? ボクはすぐ はっと 思ったのですが あのアルマンド・ルセロさんの行うテクニックに酷似しています。
 例えば彼の"Thinking"で テーブル上のJokerを 裏がえすときに そのモーションで デックを持っている手で裏返すほうは カードチェンジやっていると思えます。

 ルセロさんの方法は レクチャー受けたことないので 詳しい方法は知りませんし ルセロさんのオリジナルかどうかも知りません。

 片倉さんのアイデアは ルセロさんと同じハンドリングかどうかは わかりませんが 目的として 同じようなことを考えたいたことは はっきりわかります。
 片倉さんは このテクニックを使って無理やり考えたといっているマジックもノートに書かれてますが それは 「2枚のジョーカーをテーブルにおいて 客の指定したJOKERが あらかじめ客が選んだカードに変化して JOKERは デック中央で リバースしている。」というものを 書いています。
 なんとなく ルセロさんの"Thinking"に 雰囲気も似てます。


そして おどろくべきことに このノートは 今から38年前の 1972年に書かれているのです。
 片倉雄一・・・ 当時 高校2年生・・・  まさに天才。

 彼自身の演じる このカードチェンジを見たかったです。


<改悪版?〜ナンバー トランスポ〜>

ナンバートランスポ
 マジックを覚えると ハンドリングとか現象とか 自分好みに 意図的にしろ 無意識的にしろ 変えていることが よくあります。
 意図的な場合 「改案」となるのですが まかり間違っても 原案者の前で 「改良しました」とは 言わないほうがよさそうです。 あくまで「改案」と。

 片倉さんのノートにも 習ったマジックの改案が いろいろありますが あえて「改悪版」と書かれてるマジックがあり 気がひかれるところです。

 「ダイアモンド カット ダイアモンド」の改悪版と わざわざ書いてありますが 原案を知らないので 改悪かどうか判断はできないのですが 紹介してみます。


 現象は 1から10までのカードをデックから抜きだして見せます。同じスートのほうがわかりやすいです。ノートでは ダイヤの1〜10で説明してます。
 デックトップに1から順番に10までを フェースダウンで 置きます。
客に10以下の2つの数字を決めてもらいます。(任意)
 たとえば3と8だったとします。
マジシャンは デックトップから 1枚づつ表にしてテーブルにカードを置きます。
 客の選んだカードだけ 裏向きにして置きます。
例ですと 1,2、裏向きの3、4,5,6、7 裏向きの8、9、10と置きます。
 そこで 裏向きのカードを表向けると 7の位置のカードが3で 3の位置のカードが7に入れ替わっています。
 詳細を知りたい方は ノートの写真をダウンロードして拡大してみれば 手順もわかります。
 そのハンドリングは 何と 難しいテクニックのセカンドディールを8回も使います。10枚のカードをディールするのに 8回がセカンドディール・・・

 多分そういうところがあるので 「改悪版」と 片倉さんはあえて言っているのでしょう。 でも 彼の手にかかれば 「改悪」でなかったのではと思えます。

 それにしても この解決法 なんか すごい発想ですよね。


 最後のカードの入れ替えに ここでは メキシカンターンオーバーつかってますが 2枚のカードを同時の表にするモーションで 1枚をチェンジするので 前記事の「YK's ターンオーバーチェンジ」を使用したほうが 綺麗ではないでしょうか・・・?
と さらに「改案」を ボクからの提案でした。
 片倉さん いかがでしょうか?

*追加  友人のマジシャンより 「ダイアモンドカットダイアモンドの原案はセカンドディールを9回使うので そこが改悪ではなく 単純なカードあてを カード移動現象にして複雑化したことを改悪といってるのかもしれません。」との お言葉をいただきました。
 確かに セカンドディールの回数がそうなら 改悪と片倉さんが言っているのは そういうことかもしれないですね。 片倉さんは シンプルな現象のほうを 好む印象もあります。


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